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Posted on 2013-03-03
賢い泥棒たち

今日は、肩の凝らない、気楽な話をしましょう。あなたもこの種の話をご存じでしょうが・・。

賢い泥棒たち

 以前に私の同僚であったAさんは、その頃40歳代の独身女性で大手の企業に勤務し、大阪市内のとあるマンションの2階に住んでいました。その日彼女は、会社から命じられた東京への2泊3日の出張を終え、3日目の夜になってマンションへ帰ってきました。その夜は何事もなく就寝しました。異常に気がついたのは翌朝です。いつものように、テーブルで朝食を摂っていた彼女は、ベランダに通じるガラス扉に鈍く光る小さなものを見つけました。これまでは、気が付かなったものでしたから、不思議に思い、思わず立ち上がり、近づいて観察しました。それは小さな透明のテープ(セロテープ)の欠片でした。何故こんなテープがここに?と考える間もなく、テープは一片だけではなく3つあり、ガラス戸のクレセント錠の周辺に半円形の線がはっきり見えました。これを見て彼女は初めて思いました「誰かが入ったのかも…」。確かに切られて外されたかも知れないロックの周りのガラス片は、まるで切られる以前の如く、3片の小さな透明テープで周りのガラスとぴったり合っていました。だから昨夜は気が付かなかったのです。そこで彼女は慌てて貴重品が盗まれていないかをチェックしました。一番盗られて困るのは預金でしたから、最初に押入れの引き出しを調べました。そこには預金通帳とそのハンコを置いていたからです。見ると、以前の通り、預金通帳はハンコと共にその引き出しにありました。先ずは一番大事なものを盗られていないことを確認し、彼女はひと安心しました。次に彼女がしたことは、何か盗られていないか、を調べることでした。置いていたデパートやスーパーのポイントカード、少しの現金、アクセサリーから食糧、下着まで、あらゆるものを調べました。が、それらはみんな元通り存在していました。彼女は、更に安心しました。誰かが入ったかも知れない・・の気持ち悪い不安はしっかり残っていましたが、一応通常の日常へと戻りました。

 1週間後彼女は、やはり大事なものを盗られていたことを発見します。なんと!預金通帳の残高がゼロになっていたのです。銀行預金から現金を引き出すため預金通帳を見て、見つけたのです。そこで彼女はやっと気が付きました。この泥棒は、預金通帳とハンコを持ち出し、銀行でお金を降ろした後、再びマンションに忍び込み、預金通帳とハンコを返しに来たのでした。大金を盗られた・・・失望を抱え、犯人が捕まってお金が返ってくる少しの可能性を求めて、彼女は銀行に走りました。銀行で事情を話すと「1週間も経っていては無理です。せめて犯行の翌日にでも来ていたら、銀行員の誰かが(犯人の特徴などを)思い出せるかも知れませんが・・」。これで終わり。警察も真剣には動いてくれず、盗まれたお金の一部が戻ってくることもありませんでした。この泥棒が、リスクを冒してまで、預金通帳とハンコをわざわざ返しにきたのは何故でしょうか? 時間稼ぎだったのです。また、割られていたガラスをきっちり元通りはめ込み、テープできっちり止めたのも、この時間稼ぎが目的だったようです。それによって捕まる危険性は大きく低下するのでしょう。それがまんまと成功した訳です。こんな賢い泥棒がいたのです。

 何故こんな事件の被害者になったか? 予防法は? と考えると・・。1つの要素は、マンションの2階・・でしょう。外から忍び込みやすいようです。朝までベランダにライトを付ける・・などの方法は、予防になるかも知れません。もう1つは、預金通帳と印鑑の置き場所です。いちいちきっちり別の場所へ・・できますか?その場合は覚えておく必要があるのです。私の場合、やはり一緒にしておくことになりそうです。通帳か印鑑のどちらかを、肌身離さず持ち歩く、のが良いかも知れません。

 さて、賢い泥棒のお話、第2弾です。就職して間もない女性に電話がかかってきました。相手「○○さんですね? こちらは××(クレジット)カード会社です。最近あなたは××カードをなくされましたね?」 女性「え?そうですか?記憶にないのですが・・」 相手「そんなことはないはずです。今、調べてみてください。待ってます」 そこで、女性は探してみましたが、あるはずのカードが見つかりません。そこで「ありません。なくしたみたいです」 相手「きっと落とされたのでしょう。でも心配無用です。実は、私どもの会社へ届けられています。拾った方が送ってきたようです」 女性「え?そうですか。良かった」 相手「あなたにすぐに届けますので、2-3日お待ち下さい」 女性「はい、ありがとうございます。よろしくお願いします」 それで女性は安心して待っていましたが、何日経ってもカードは戻ってきません。彼女は、今度は自分の方からカード会社に電話をしましたが、どうも話が通じません。よーく訊くと、カードが届けられていた事実もない様子、どころかカード会社が彼女に電話をした事実もないようでした。しかも、なくしたカードを使っていっぱい使われ、カード用の金額はゼロ近くまで減少していたのです。そこでやっと事情が分かりました。電話をかけてきた相手は、彼女からカードだけを盗み、あるいは彼女が落としたカードを拾い、そして敢えて彼女に電話してきたのです。すぐに警察へ駆け込ませないために・・・すなわち、これも時間稼ぎのための電話であり、犯人の意図したとおりの結果になりました。

 この話には余談があります。私は、学生たちにこの話をするとき「カード会社からの連絡は封書で来ます。電話で連絡してくることはないので、カード会社からの電話なら偽物と考えて注意した方が良い・・」と話して来ました。そんな私に、先日、カード会社から電話がかかって来ました。私は「そーら来た!これは詐欺・・」と身構えて話を聞きました。相手は私を確認した後「(クレジットカード決済の)銀行口座で、残高不足のためか、お引き落しが出来なかった様です。早急にご対応をお願い・・・」というものでした。相手が詐欺・・どころか、こちらがウッカリのミステークで「すみません、気が付きませんでした。早急に振り込みます」と謝罪する始末でした。

 実はもう一つ、最近聞いた賢い泥棒の話があります。スーパーで買い物の話です。スーパーのレジ近くには、客が残した(持ち帰らなかった)レシートが床に落ちていたり、買い物篭に残っていたりします。この他人のレシートを盗るのです。そしてそのレシートに並んでいる品物のすべてをそのまま商品棚から、品数も同じにして、袋に入れ、レジを通らずに外へ出ます。店の従業員に咎められたら、レシートを見せればよい・・という訳です。

 この話、更に上を行く事件があるそうです。スーパーで他人のレシートを盗り、レシート通りの品目と数を揃えて袋に入れる・・までは今の話と同じです。そこから、レジへ向かうのです。レジで「買ったのですが、返品したい・・」と話し、レシートを渡し、現金を受け取る・・のだそうです。やりますねぇ。  こんな話を聞いてからは、私はレシートをきっちり受け取り、家まで持ち帰るように心がけています。

 私たちの社会には悪意を持った人もいます。ここに登場した連中のように、賢いのもいます。つい引っかかって馬鹿を見る……ことを避けるには、私たちも賢くなる必要がありそうです。


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