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Posted on 2020-05-04
コロナに対する私見

このサイトの更新を長らくサボっていました。
申し訳ありません。

さて、本年2月以来のコロナ騒動、世界中大変なことになっています。
長期に亘ると判断しましたので、この時期「心穏やかに過ごす」ことを目的として、サロンのメンバーが集う「サロン・ド・K プラザ」と称するネット上の広場を開設しました。
その開設アナウンスを見たサロンメンバーの一人から、私のコロナに対する(医者あるいは生物学者としての)意見とその解説を求められました。
そこで、以下に私見を述べます。

微生物は人類より遥か昔から地球上に存在します。
人類は新参者であり、大先輩である微生物を人類が駆逐しようとするのは余りにも傲慢(そもそも不可能)です。
我々人類は微生物と共存・共生すべきです。

コロナニュース初期の本年3月の初め、教え子の一人が「結局みんなこれに罹るのですよねぇ」とメールして来ました。
ドイツのメルケル首相も「60-70%の人々が感染する」と言いました。
その通り。ほとんどの人達が罹患して免疫を獲得してやっと収束します。
そこまで到達しても免疫ができていない人は感染し、その一部は重症化や死亡するでしょう。
が、そうなると(現在のインフルエンザと同じ状態で)ニュースにはなりません。
これが、コロナと人類の共生の姿です。
そう言えば、先日サイエンス誌に、米ハーバード大による予想「新型コロナウイルスの世界的流行を抑えるためには、外出規制などの措置を、2022年まで断続的に続ける必要がある」が載りました。
これも、種々のデータから「多くの人が感染し、集団免疫を獲得して流行が抑えられるまでの時間」を計算したものでした。

先日のニュースで、「イギリスは(今回のコロナ流行の初期に)集団免疫を考えて、しっかり予防(他国からのコロナ持ち込み防御)しなかったのが問題である」との説があることが報じられていました。
確かに、感染者が多いほど、集団免疫の獲得が早期に達成される、と言う理屈が成り立ちます。
但し、患者が一気に増えると(一部の外国のように)医療体制が破綻しかねません。
その意味で、わが国では比較的じわじわ増える感じですから、深刻な医療崩壊は免れていると言えそうです。

免疫を獲得する方法には2つあります。感染(罹患)するかワクチン接種か、です。
前者の場合、一部の人は肺炎症状から重症化や死亡まであり得ますが、多くの人は知らず知らずのうちに罹り、治ります。
もう1つの方法であるワクチンは、病気の苦しみを伴わない免疫獲得法として確かに期待大です。
但し、開発された後、効果や安全性を確かめ、一般人の接種が可能になるまでにはかなりの時間がかかるでしょう。

治療薬ですが、コロナに対する特効薬は未だありません。
現在報道されているアビガンなどの薬は、既に(他の)ウイルス薬として使われている薬で、コロナにも効くかもしれない、と試験的に使われているものです。多くのコロナ感染者に効けば良いのですが…。

現在、一部の国で抗体検査が始まっています。抗体産生は免疫機構の重要な一面で、抗体を持つ人は既に感染したことを意味します。
問題はこの抗体の効果(確かにコロナを不活性化できるか?)と持続期間(数週間しか持たないか一生続くか)であり、報道では今のところ不明であると言われています。
多くの場合は、抗体は有効で、数週間程度存在しますので、期待しましょう。

さて、免疫力を上げるための方法(食品やサプリなど)がメディアで種々語られているようですが、その効果を私は信用できません。
更に、仮に、実際に免疫力をアップできたら、別の疾患(アレルギーや自己免疫疾患)が出てくる可能性が高く、お勧めできません。
免疫力は高ければ良い、のではありません。免疫力は「ほどほど」が良いです。その「ほどほど」をしっかり保つことが大切です。
そのための方法は1つだけ、「心身共に健やかに保つこと」です。
すなわち、ストレスを溜め過ぎない、よく食べよく眠る、明日への夢を持って生きる、ことです。
蛇足ながら、ついでにもう1つ。アルコールなどの消毒剤の使い過ぎ(過度の清潔)はお勧めできません。
ほどほどの免疫力を保つには、時々は微生物が侵入してくる、のが良いのです(欄外参照)。

広義の免疫学の一部である補体学をライフワークとしてきた私の意見を述べました。
絶対の自信があるわけではありませんが、免疫学者のうちかなりの先生方は同じように考えておられると思います。

最後にもう一度、この問題、ウイルスを駆逐して収束するのではありません。
人間は微生物を含む他の生物より遥かに優っている、と考えるのは傲慢です。
遥か昔から世界中の誰もが「戦争はダメ」と知っていながら、今だに何処かで戦争している愚かな種です。
他の生物とレベルは同等であり、彼らとの共存、共生を目指すべきです。

以上、まともな日常が一日も早く戻ることを願って。

2020年5月 北村 肇

消毒&清潔のお話:

現在、スーパーなどの出入り口に消毒用アルコールが置かれています。
消毒剤の中でもアルコールは強力で、手指に付いたコロナを確実にやっつけ(不活性化)ます。
コロナには(アルコールではなく)石鹸を使った手洗いで十分効果があります。
しかし、外では手洗いよりアルコールを吹きかける方が遥かに簡便ですから、感染リスクが高い現在の状況では良いでしょう。
私が心配するのは、コロナ騒動が収束した後でも“消毒が常態化”することです。
外で種々の微生物に触れても、帰宅したらサッと手洗いする、で十分です。
過度の清潔は、免疫力のバランスを崩したり、疾患発生に繋がる可能が出てきます。


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