著書、補体学入門


著書、補体学入門

『補体学入門 — 基礎から臨床・測定法まで —』を、2010年11月に、学際企画株式会社から、出版しました。

以下は、この著書の
・目次
・はじめに
・補体研究会会長による序文
・あとがき

です。

  • 目次
  • はじめに
  • 序文
  • あとがき
  • 補体学入門 ―基礎から臨床・測定法まで―

    【基礎編】
    はじめに
    第1章 補体とは
     1. 補体の発見
     2. 補体のシステム
     3. 補体活性化とは
     4. 補体反応の特徴
      i) 連鎖反応
      ii) 金属イオンの必要性
      iii) 活性化=不活性化
     5. 名称と表現法

    第2章 活性化経路と補体タンパク
     2-1 古典経路
      1. AbのクラスとC1q結合部
      2. 成分と反応順
      3. 連鎖反応のメカニズム
      4. C1, C1q, C1r, C1s, C4, C2, C3
      5. CPにおけるZymogen反応
     2-2 第2経路
     2-3 レクチン経路
     2-4 膜侵襲経路
    第3章 補体制御因子
    第4章 補体レセプター
    第5章 補体の機能
    第6章 免疫溶血反応
     概説、免疫溶血反応の実際、
     免疫溶血反応の特徴・特異点
      One hit theory 概説 数学理論
     中間生成体 C2のdecay 2つのTmax C1 transfer
     特殊な免疫溶血反応
      間接(受身)溶血反応 E+血清 C9不参加 C3不参加
     免疫溶血以外の補体依存性溶血反応 ACH50 Reactive lysis
     溶血を利用した検査法 補体結合反応、Ham,sugar water, DL抗体、その他
    第7章 産生部位と遺伝

    【臨床編】
    第8章 補体成分欠損症とPNH
    第9章 Cold activation
    第10章 各種疾患(腎、炎症・感染症、SLE その他、肝など 治療)

    【測定編】
    第11章 補体測定法の種類と意義
    1)検体材料
    2)種々の測定法  タンパクか活性か?分解産物か?
    3)活性測定法には数種類
    4)個々の成分におけるタンパク測定値と活性測定値の意味
    5)データの解釈
    第12章 補体測定法の実際
    1)CH50
    2)ACH50
    3)個々の成分活性(C3)
    4)C42-Tmax

  • 補体は100年以上前に発見され、多くの先人達の努力によって研究が進み、今ではその実態のほとんどが明らかになったと言えるであろう。知れば知るほど興味深く、生物学の奥深さを思い知らされる分野である。しかし、はっきり言うと一般の生物学者や免疫学者の補体への関心は薄い。補体は、生体防御機構の中心的な存在であるばかりでなく、各種の疾患やその病態の成立にも大いに参加し、多くの疾患では補体検査が診断に役立ったり活動度を示すことが明らかになっているのに、臨床医の関心もイマイチで、避けて通られることが多い。この傾向は我が国だけのものではないようで、2年に一度開催される国際補体シンポジウムも、アメリカ、ドイツ、日本、イギリスからの参加者を中心に、集まるのはせいぜい200人位である。「補体は分かりにくい」、「補体は複雑である」あるいは「補体は難しい」などと言われて来た。なるほどツンとすました美人みたいに近寄り難く、気さくに話ができそうには見えないかも知れないが、なぁに、一皮剥けば単純で、誰でも良い友達になれる。友達どころかその魅力に取り憑かれファンになること、請け合いである。

    本書は、以下に

    補体は主役である。
    補体はファミリーである。
    補体はマルチタレントである。
    補体は淋しがり屋である。
    補体はリレー選手である。
    補体は川であって池ではない。
    補体は一大事がないと眠っている。
    補体は正義の味方である。
    補体は悪者である。
    補体は掃除屋である。
    補体は掴まえる。
    補体は穴を開ける。
    補体は“ふりかけ”である。
    補体はサイレンを鳴らす。
    補体はぐうたらである。
    補体は、“活性化”と“不活性化”は同じである。
    補体は不可欠である。
    補体はなくても生きられる。
    補体はself と not selfを区別する。
    補体はラベルを貼る。

    ことを解説する。これにより、本書が多くの生物学に関わる人々にある、補体への偏見を取り除き、実態の理解に少しでも役立てば幸いである。

  • 本書に、補体研究会会長である木下タロウ氏(大阪大学 免疫学フロンティア研究センター・微生物病研究所、教授)が序文を寄稿してくれている。以下に紹介する。

    北村 肇先生の『補体学入門』は、補体のことを勉強してみたいと思われる方に格好の本である。補体の基礎的解説から、病気との関わり、臨床検査の実際まで、あらゆる角度から幅広く一冊にまとめられているので、学生、研究者、医師、検査技師、患者それぞれのニーズに合わせた読み方ができる。また、広く浅く補体全体を知るための読み方もできるし、メカニズムを詳しく理解することもでき、そこからさらに突っ込んだ勉強へ進む入り口にもなる本である。
    このような本が一人の著者によって書かれることはそれほど簡単ではない。医学部出身の研究者で、かつ医師であり、また大学で臨床検査学を講じられた北村先生によって、はじめて成し遂げられたと思う。「はじめに」で述べられているように、一見補体は難解であるが、それをできるだけ平易に説明する努力が至る所に払われている。多くの成分、複数の活性化経路、それらの繋がり、様々な生理活性、数多くの病気との関わり等々の複雑さで、難解な物との印象を持たれる補体系であるが、原理を簡潔に示すことで複雑さに圧倒されることなく、読者を本質に導くことに成功している。
    ここ2−3年で、ヒト化抗C5モノクローナル抗体の実用化、新たな補体阻害薬の治験例、C1インヒビター製剤など既存の抗補体薬の再認識と、補体が関与する疾患の治療にまつわる話題が次々と出て、注目されつつある。このような時機にタイミング良く本書が世に出ることは、大変喜ばしい。

    2010年9月
    大阪大学 免疫学フロンティア研究センター・微生物病研究所、教授
    木下 タロウ

  • 若い医師や生物学者に、更に可能ならば、あらゆるバイオサイエンスを志す学生たちに、補体の面白さを理解して戴きたいと考えて本書を書いてみた。我が国では補体のテキスト・参考書は30年間出版されていないうえ、免疫学などの大学教育に使用する教科書において、補体の占める面積は減少するばかりであったからなおさらである。

    読んで戴いた方には、補体が“リレー選手”であったり、“ふりかけ”や“掃除屋”であったり、果ては“サイレンを鳴らす”、“ラベルを貼る”、“穴をあける”、などをする興味深いマルチタレントであることがお分かり戴けたのではないだろうか? 赤血球が酸素運搬以外に(補体を介して)重要な仕事をしていることや補体が各種の病態に関わっていることも分かって戴けたことと思う。ただし、ここに述べたことが補体のすべてではない。今後もその生体機能や病態への参加について多くのことが明らかになっていくことであろう。確かに、今も補体は魅力いっぱいの世界である。

    私は今年で68歳になった。これまでの紆余曲折の人生を振り返ると、それぞれの岐路で道の選択を間違えたのでは?と思うことが多々ある。医学部ではなく芸大でも受けていたらもっと面白い人生になったかも……とか。しかし、これだけは絶対正しい選択であったと大いなる自信を持って言えることが2つある。その一つが補体の研究をライフワークにしてきたことである。熟慮の上で計画・実施して得られた実験のデータが、それまでの疑問を解決するさまは、何物にも代えがたい喜びであった。その意味ではこの本は私の半生を語るものであるといえよう。この紙面を借りて、サポートしてくれた共同研究者達や、今は亡き妻弘江、そして今も毎日私をencourageしてくれる学生たちに謝意を表する。この本が同時に、若い科学者達に少しでも補体の魅力を伝えることができれば、望外の喜びである。

    平成22年7月 北村 肇